以前読んだ田宮俊作氏の著によると、人は長じても心の平穏を保つには幼い頃に親しんだモノに触れるのが一番だそうである。
それは40年ちょっとの私の人生においても実感でき、幼い頃から長じるまでホビーの対象が移り変わり、または増えていった中でも、結局小・中の頃に親しんだプラモデル、ラジコン、ゲームといったモノへの興味は変わらず、むしろ長じてからの方が生活や仕事の上で辛いことがあった時にそれらを楽しむことで心の平穏を取り戻す様になっていた。
ある意味、宮粼駿氏の言う「楽園」への回帰願望なのかも知れない。だが、「更に前に進む」為にそれが必要なのならばこれはネガティブなのではなく解法が明らかになっているという点でポジティブであるのだと考えたい。
ま、それはともかく。
我々団塊Jr世代はバブル時期にガンプラやファミコンなどの様々なホビーの流行に遭遇することができたのだけれど、その中の一つが「ラジコンバギー」。これは廉価にも関わらず本格的なスペックを有したタミヤの「グラスホッパー」「ホーネット」の発売に端を発する1984年頃からのブームで、当時はフルセットで2〜3万円のラジコンバギーがお正月などを中心に売れ、空き地があれば必ずそこにはラジコンカーを走らせる子供の姿が見られ、TVでは毎週タミヤ主催のラジコンレースを流す番組が放送される、という様な状況になってたんだ。
そのブーム中には玩具メーカー、ラジコンメーカーが次々に参入、新製品をリリースしていたのだけど、その中でもブームの旗手とも言っていいのがタミヤ初の4WDバギー「ホットショット」。これは当時の子供たちにとってのステイタスであり、それを手にすることは当時の雑誌などに溢れるそのマシンの情報を最大限に楽しめる権利を手にする…つまりブームにどっぷりと浸かれることを意味していたんだ。
勿論、当時の私もそれを手に入れることを夢見ていたのだけど*1、不幸なことに1986年の正月のお年玉はそれをフルセットで買うには少々少なすぎた。また当時の友人がちょっと前にホットショットを手に入れたこともあって、それを手に入れることを諦めざるを得なかったんだ。
だが捨てる神あれば拾う神あり。時を同じくして東京マルイがホットショットよりも6000円ほど安い価格で「サムライ4WD」というバギーを発売してくれたんだ。
東京マルイ ザ・サムライ4WD(侍)未開封・未組立パッケージ
これの後継車種の名前がニンジャ、ショーグンだというのは笑うところです
はっきり言って超格好いい。安く、軽く、何より独創的なスペースフレーム構造のシャーシが魅力的。ホットショットを諦めた私はこれに飛びついた。結果どうなったか?私はどっぷりラジコンにハマることができた一方で、先の友人とは大してレースができなくなってしまったのだ。その理由は最近になって判明したのだけど…どうやらコイツは速すぎたみたいなんだよね。むしろホットショットが遅かった、と言っていい*2。実際に友人とのレースでは「アイツは俺が相手だと思って手を抜いてるのではないか?」と思えるほどの差がついてしまい、私が首を傾げることになっていたんだ。友人はその時は黙して語らなかったが、今にして思えばあの微妙な表情はマシンの性能差に愕然としていたんだろう。操縦技術のない子供の草レースはマシンの性能差がストレートに出る。勝てないレースをしても楽しくない。友人がそう思ったのも当然だよね。
そんなゴキゲンなサムライ4WDだけどコイツには一つだけ大きな欠点があった。何しろマイナーなマシンであった為に情報が皆無だったんだ。ムックや雑誌を見ても載っているのは軽い紹介記事と通販広告だけ。レースリザルトには登場すらしない*3。無論、ブームの頂点たるラジコンのTV番組、タミヤRCカーグランプリに出てくるハズもない。友人は大して勝負してくれず、毎週流れるTV放送を見ては自分には無関係のマシンを操る人々が嬉しそうにレースを楽しんでいる。
ブームの中で軽い孤独を感じつつ、TVで華麗に走り回るホットショットは、いつしか再び私の憧れになったんだ。
でも、ブームはブームだ。2、3年もすると皆は思い出した様にファミコンに熱中し、空き地でラジコンを走らせるのは時代遅れで格好悪い様な空気が流れてきた。私もPCやゲームに熱中することになったのだけど、それでも公園を見つけてはラジコンを走らせるのにいい塩梅か否かを確認するのがクセになってしまい*4、その度に「ホットショット…欲しかったなあ…」と思い起こす様になってしまったんだ。
それから時は過ぎて20年後、2004年以降、タミヤは恐らくかつてのブーマーの出戻り需要を見越してか往年のラジコンバギー達を一部改修して続々と復刻、2007年には遂にあのホットショットを復活させたのだけど、もうそれからは地獄だったw
実はキッコーマンのキャンペーンで復刻ホーネットを手に入れることが出来て、それはそれで楽しむことができたのだけど、やはり心はホットショットにあるのでw、「当時遂に入手の叶わなかったホットショットが再び手に入る状況になっている。」という事実がことある度に私の中に蘇ってきて、懐かしさと悔しさが入り混じってちょっとした隙に精神的に不安定になる原因になってしまったんだ。
そしてそれから更に8年…タミヤもいつまでそれを販売しているかわからない…いつ無くなってしまうかわからないことへの恐怖…また私は手に入れることができないのか?という焦り…面倒臭い…ならもう買ってしまおうじゃないか!
というわけで買いました。はい。RCチャンプにてフルベアリング付き15048円也。ベアリングがえらい安いのはかつてのラジコンブームの後に起きたミニ四駆ブームのお陰ですね。私はそっちには乗らなかったのだけど、ありがたいことです。
そして手に入れてしまえばもうどうと言うこともありません。30年間の負い目…怨念と言い換えてもいいそれは綺麗に消え失せ、物凄く充たされた気持ちになっていますw
そんなわけで今回の教訓「欲しいモノは無理をしてでも手に入れよう」。あと、親御さんはできるだけお子さんが欲しがったモノを買ってあげてください。こんな30年の怨念なんか、ない方が幸せですw
これ、当分は箱のまま眺めていよう…もうそれだけで幸せ…。
しかしアレだな。こうなると当時の雑誌やムックだけでなく、今一度サムライやオプティマみたいなクルマも復刻を期待したいところだな?
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