あの山の向こう、青い空と白い雲の下には今も故郷「だった」町がある。

帰る度に「あの時出てきたあの町」には帰れないことを思い知らされて激しい郷愁と喪失感に襲われて死にたくなる。
かつて私が幼い日を過ごした「あの町」のあの風景はもうどこにもない。

懐かしの顔はあっても、あの風景に戻ることは叶わない。

何故自分はあの町に残らなかったのか。何故自分はあの風景を記録しておかなかったのか。
いや、後悔は無意味だな。悔やんだところで戻りはしないし、今の自分は日々生きる為の糧を得るのに精一杯なんだ、そんな余裕はない。
どうせ次に自分があの町に落ち着くのは骨になった時だけだ。そうすれば夢の中で相まみえよう。


…写真や動画のコストが安くなった今、二度と間違いはしない。せっせと写真を撮っておくことにしよう。