【艦これSS】提督の憂鬱

「深海棲艦」と呼ばれる「敵」の出現は、極限まで高まっていた我が大日本帝国と米国との緊張を一気に解消させた。
得体の知れない国籍不明の異形の艦隊。彼らは明確に我々への敵意を表した。その練度は恐ろしく高く、まるで生き物のような動きで我々を圧倒した。
だが事はそれだけでは済まなかった。ほぼ時を同じくして我々の艦艇が次々に操舵不能となったのだ。最初は呉、次は横須賀…鎮守府に帰還してきた艦が次々に操舵不能…いや、はっきり言おう、「操艦不能」となったのだ。
未曾有の正体不明の敵の出現、そしてそれに対抗する兵器の無効化という事態の前に、もはや二国間で戦争などをしている場合ではなくなってしまったのだ。

「提督」
何度目かの"要約すると"「何もわからない」と書かれた艦艇の調査結果資料に目を通しながら憂鬱な思いに浸っていると、新任の佐官が執務室の入り口から声をかけてきた。
「事件について意見具申よろしいでしょうか」
この男は…確か某神社の神主の家の次男だったか。ことあるごとに「霊感」のような能力を披露しては夜間当直を怖がらせる愉快な男だと聞いている。今回、思うところあって自ら調査に加わったと聞いているが…
「許す」
「は。…とは申しましても閣下に信じていただけますどうか…ご存知でしょうが私は家柄上霊感の様なモノが働きまして、以前より艦には独特の霊的なモノを感じていたのですが、今回はっきりわかりました。」
「わかった、とは」
「おわします」
「おわします、とは…」
「神霊が、おわします」
「…」
荒唐無稽な話だ。20世紀にもなって30年以上経っているというのにそんなオカルト話を言い出す者が軍に居ようとは思わなかった。*1
「貴様は少し疲れている様だ。休暇をとらせよう」
「疲れてなどおりません」
「扶桑には大和ホテルの様に空調は付いておらんからな。まあ付いていた所で動きもしないが」
「別段暑くなどありませんでした」
「気を落ち着かせろ。ラムネはどうだ」
「自分は炭酸は苦手です」
「まあとにかく、休め」
「私の言うことが信じられないのは致し方ありません。ですが、是非一度、神降ろしの神事を行うことを許可して頂きたいのです」
非科学的にもほどがある。とは言え既に手は尽くした。こうなっては一度神頼みをするのも悪くはないだろう。
「わかった、許可する。して、ツテは…あるな」
「はい。私の実家に姉妹で巫女を務める者がおります。まずは彼女たちに…そうですね、まずは扶桑と山城で試してはいかがでしょう」


それが艦艇娘、通称「艦娘」の誕生、我々の反抗の始まりだった。
理由はわからない。突如艦艇に神霊の様な存在が誕生し、艦のコントロールを掌握した。そのモノに意思があるのならば、勝手に動かそうとしても動かないのは道理。神降ろしの神事にて娘達との精神融合を果たしてみれば意思の疎通が可能となり、再び艦のコントロールが可能となった。
それだけではない。以前以上に艦の動きが良くなった。「まるで生き物のような」操艦が可能になったのだ。そう、あの深海棲艦のように。
この共通性は、あるいは、もしかしたら…いや、今は考えまい。

だが、結果として戦艦だけでなく、無数の駆逐艦にまで年端のいかない娘達を配属させることとなってしまったのは帝国軍人として忸怩たる思いだ。故に、全将兵達には何があっても艦娘達を連れて帰るように厳命している。…もっとも、艦が轟沈するような場合には心神喪失状態になっている彼女達を救うのは至難の業なのだが。


それにしてもだ。
いくら艦娘がその艦艇の神霊と融合してると言っても、被弾すると衣服まで破損してしまうのはどうにかならないのだろうか。現場の兵達からは一目で艦の被害状況が把握できるので好評だということだが、好評なのがそれだけの理由でないことは考えるまでもなく明らかだ。
聞けば彼女たちの服や背負い物は神降ろしの神事と同時に現れる、言えば霊的存在だということなのだが、男所帯の艦の中に娘一人あられもない格好をしているのは風紀的にも…いや若い兵達の前ではそれ以上の問題も考えられる…彼女の身の回りを警護する女性の兵士などもつけなくてはいけないのだろうか…いやしかしそれでは…

以上、「艦娘は艦艇の神霊と同化した巫女さんor霊感少女だから解体されても女の子は無事だよ」派だよ、というお話でした。最初はメンタルモデルでいーじゃん、とか思ったのですが、それだと解体されたり「食われ」たら可愛そうだなと。
旧軍の言葉遣いとか用語とか知らんのでその辺りは適当に流してくだせー。


ま、そんなわけでご他聞に漏れず私もここ数週間艦隊これくしょんにハマっております。面白いですよぉ



【追伸】
誰かボーキと鉄をくれ。

フジミ模型 1/700 特シリーズ No.45 日本海軍重巡洋艦 高雄 プラモデル 特45

フジミ模型 1/700 特シリーズ No.45 日本海軍重巡洋艦 高雄 プラモデル 特45

「メンタルモデル」についてはこちら参照

*1:伍長「くしゅん」